認知症の親を施設に入れる方法※入りたがらないけど説得した方がいいの?
親が認知症で自宅はもう限界!
施設入居の説得はどうすればいいの?
実家で母が一人暮らし、物忘れの症状も出てそろそろ自宅では限界と思っているが、介護施設は絶対イヤと拒否している。どう説得したらいいの?
そんなシチュエーションになって困っておられるご家族、結構いらっしゃると思います。
この記事でわかること
・住み慣れた家がいいというのは当たり前、どうしたら納得してくれる?
・本人が家にいたいと言ってるから仕方ないと説得を諦めたことによるリスク
・施設選びのポイント
・入居後の様子は?
・この覚悟はしておいてください
元住宅型有料老人ホームの施設長をしていた経験をもとにお伝えします。
ぜひ参考にしてみてください。
目次
認知症の親を施設に入れる方法※入りたがらないけど説得した方がいいの?
認知症の親を施設に入れる方法※入りたがらないけど説得した方がいいの?
この辺難しいですよね。
住み慣れた家がいいというのは当たり前、どうしたら納得してくれる?
結論
納得はしません。だって納得したことを忘れてしまうから。
ちょっと乱暴ですが、昨日話をして「わかった。」と言っても、中程度以上の認知症の方なら「わかった。」と言ったことを忘れてしまいます。
だから、次の日「そんなこと言った覚えはない。」と言っても感情的にならないでください。ご本人は悪気ないんです。本当に忘れてしまっているから。
ただし、だからと言って施設入所の話をしないでいいということではなく、ある程度の認知症の方であってもしっかり時間をかけて家族間で話をしてください。
現在のお父様、又はお母様の状態、おかれている状況、また、家族がどのような状況でもう難しいと思っているかなど詳らかに話し合ってもらって、忘れるにしても「わかった。」と言ってもらえるのがベストです。
そういってもらえたら、その話を施設側に伝えておいてください。
もし、話を積み重ねても絶対拒否する場合の対応は後でお伝えします。
認知症一人暮らしの親が家にいたいと言ってるから説得を諦めたことによるリスク
ことが起きて初めて、あの時説得を諦めていなければと思うリスクが以下のような物です。
ぜひ回避してください。
- 家族内不和
- ご近所トラブル
- 思わぬケガ
家族内不和
毎日電話が親からかかってくる。
また、その対応を誰がしなければならないかで、今まで仲の良かった夫婦間や兄弟間で不協和音を発するリスクがあります。
独居でも同居でも認知症家族の介護は想像以上に大変です。
ご近所トラブル
お庭の手入れがされていなくてジャングル化している。
枯れ草が伸び放題。用心が悪いですよね。
火の不始末によって住宅密集地で火事の火元になってしまったら?
取り返しがつきません。
思わぬケガ
転倒して骨折はよくある話です。
ただの骨折ならまだしも、骨が飛び出るような開放骨折をして出血多量ということも。
住み慣れた家がいいというのは当たり前なんです。
で、その気持ちをくんであげたいと思う気持ちもわかります。
でも、そう言っているお父様、お母様の判断能力は認知症のために明らかに20年前とは違います。
何か起こってからあの時こうしておけばと後悔した時ほもう遅いんです。
で、間違いなく事故は起こります。
起こらない確率のほうが低いです。
もう難しいと思ったら心を鬼にして話を進めていきましょう。
認知症の親を施設に入れる方法※施設選びのポイント
ここでは、施設の種類は省きます。
具体的な質問内容にフォーカスしてお伝えします。
最終的には入居対象の親御様も必ず見学してもらったほうがいいですが、最初の施設見学はご家族だけで相談に行きましょう。
まずお父様、お母様の現在の認知症の症状について、また、本人がどんな日常生活を過ごしているか、また、施設入所に関してすでに話し合っているのであれば、話し合った内容と状況について一通り話したうえで、
・よく似たケースは過去にあったか?その場合どのように対応したか。成功事例を具体的に、
・うまくいかなかったことはあるか?その場合はどのような対応になったか?
・その話を介護の責任者、又は施設長から聞き取りしてください。
ポイントは、現地の職員から直接聞くことです。
ホームによっては入居担当の職員、いわば営業職のような職員がいます。
同じ系列のホームでも施設長の方針によって若干対応が変わることがあります。
営業職員ですと、見学した施設では行われていない事例を話される可能性があり、実際入居してみるとそこの職員は経験していないことなので、その時聞いた内容が実行されていないと感じることがあるからです。
私が体験した事例ですが、80代前半の男性で、昔ラグビーをされていたので体はとても元気ですが、5分前の記憶がきれいになくなるという方でした。
入居されてから、いつも「家に帰る。」と施設の玄関前で待機しており、施設内からはボタンを押さないと開かないので、外部から来客があり、玄関が開いたタイミングで外にでる。
ということをくりかえしていました。
その方の長女様は近くにお住まいだったため、いつも夕方ごろに面会に来てくれていましたので、無理に外に出るのを止めずに10~20分ほど私や事務所にいる職員が後ろをつけてタイミングを見計らって、
「長女様が面会に来てくれると連絡がありましたので、お伝えに来ました。一緒に戻りましょうか。」
と伝え
「いつも来るなら早めに連絡してこいと言ってるのに。」
などブツブツ言いながらも、戻ってもらうということを繰り返すうちに、最初のころはイライラした様子もあったのですが、だんだんそれが日課となり、日に数回あったことが、大体夕方1回まで減ってきて落ち着かれて過ごされるようになった。
ということがありました。
こういった事例はやはり実際行った人から聞くほうがその時の細かい対応も聞けますし、安心感につながりますよね。
物忘れの症状が出てこられた方は入居して一定期間は必ず「強い帰宅願望」があり、慣れるまでスタッフがいろいろ対応します。
その対応を頑張っている施設ほどリアルな事例をたくさん持っているのでそういった話を聞くことで、実際誰がどのように対応しているのかがわかり安心につながると思います。
また、そういった事例において介護職だけでなく施設長はじめ、看護師や事務員など他の職種はどのようなかかわりをしているのかを確かめるのもおすすめです。
他の職種も積極的にかかわっているようならその施設は一体感をもって入居者に対応している良い施設だと思います。
入居後の様子は
認知症があり、入居で前向きでない方を受け入れますという施設であれば、ほぼきちんと対応してくれていると思います。
きちんと対応していることが前提になりますが、
私の16年間の経験上、老人ホームの入居に300人以上かかわっていますが、「難しかった。」と思い出す方は3名、それもすべて男性です。1%ですね。
逆に言うと、他の99%の方は私の見る限り(ご本人の思いはいろいろあると思いますが)概ね2~3か月のうちに落ち着かれ、日々の生活は基本的にご機嫌よくお過ごしになられていたと思います。
「施設の方に迷惑をかけていないか?」「丁寧に対応してくれているか?」いろいろ不安があると思いますが、安心してください。施設選びさえ間違わなければ、気持ちよく暮らされています。
この覚悟はしておいてください
覚悟の話をする前に、「本人と話し合いを積み重ねても絶対に拒否する場合」でも、どうしても自宅では無理なので入居させてほしい。
といった場合の方法をお伝えします。
有料老人ホームでしたら、体験入居を使う方法です。
ほとんどの有料老人ホームでは最長7泊ぐらいまで、体験入居ができるので、「毎日の食事や掃除、お風呂も入れるので旅行と思って一度体験してみて。」と言って体験してもらいます。
もちろん拒否が強い方ほど翌日から「家に帰る。」となりますが、そこはホームの職員に任せてそのまま入居契約をしてしまう。という方法です。
この方法はかなり強制的になりますので、あまりお勧めしませんが、どうしてもという場合は出来ないことはありません。
ここで、この覚悟はしておいてください3つです。
- 3か月ほど面会を断られることがあります
- 気分を落ち着かせるための薬が処方されることがあります
- どうしても落ち着かない場合は精神病院に入院する可能性があります
1.3か月ほど面会を断られることがあります
こちらは強制的に入居された方に限らず、帰宅願望の強い方全般にお願いされることです。
面会をすることによって「迎えに来てくれた。」と勘違いして、少し落ち着きかけていた方の帰宅願望に火がついてしまい、その後の対応が大変になるため、環境の変化に順応するまでの期間、面会を断られるケースがあります。
状態の確認についてはホーム側と打ち合わせて、定期的に連絡を取り合うようにしましょう。
人によっては、逆に当面できれば毎日面会に来てくださいと依頼されることもあります。
2.気分を落ち着かせるための薬が処方されることがあります
興奮してご飯も食べない。夜も寝ない。入浴も拒否。というようなことが続くと体調面に支障をきたしてきます。少しでも落ち着いてもらうためにかかりつけのドクターに相談して、精神的に落ち着く薬が処方されることがあります。
3.どうしても落ち着かない場合は精神病院に入院する可能性があります
「どうしても落ち着かない」状態とは、施設のスタッフや他の入居者に危害が及ぶ可能性がある場合と自分で自分を傷つける行為がある場合です。
施設のスタッフや他の入居者に危害が及ぶ可能性がある場合については、私の経験でも、そう何回もないですが、その中の一つに
80代男性、柔道5段、中程度の認知症で耳も悪くコミュニケーションがとりづらい方が、ご家族がどうしても自分たちでは看れないので入居させたいという相談があり体験入居されました。
ご家族によると、夫婦二人暮らしで次男夫婦が近くに住んでいたのですが、自宅で気に入らないことがあると奥様を杖でたたいたりするような暴力行為があるので何とかホームに入れたいということでした。
来られた当日の夜から、「帰る。息子を呼べ。」という訴えが頻回にあり、ご飯や服薬もままならない状態で、3日目の夜中に大暴れして、スタッフを追いかけ、スタッフが避難した控室のドアに共用部の椅子を投げつけるというような状態になりました。
さすがにスタッフや、そこに住んでいる入居者にも危害が及ぶ可能性があるため、ご家族、かかりつけドクター、施設長、介護責任者が相談し精神病院に入っていただくことになりました。
この時はすぐに受け入れてもらえる病院が見つからず、トータル1週間ホームに滞在されており、耳が遠いので横で話をしていると急に手が出てきて殴られたり、噛みつかれたりと本当に大変な1週間でしたが、ご本人もほとんど寝ておらず、また、入浴も1週間で1回しかできない、服薬を拒否して全然薬を飲めていない、ご家族は家に帰ってこられても自分たちは対応できないのでどうにかしてほしいという状況でしたので、私たちとしても入院は致し方ない選択でした。
このようなケースはかなり稀ですが、特に拒否の強い男性の場合は精神病院入院の可能性があることを想定しておいてください。
あと、自傷行為のある方も同様です。
まとめ
最後に
ご両親の介護施設を探していることについて、「親は子供が看るものだ。」と反対してくる親族がいて悩んでいるといった話を聞くことがあります。
でも、そこは心折れる必要はありません。
何でここまで一生懸命、親のためにホームを探しているのか?親のことを大切に思っているからですよ。
そんなことを言ってくるあんたがみてくれるのか?
看るのは私です。
お父様、お母様にマッチするホームがみつかり、入居することは決して不幸なことではありません。逆に入居後の生活がより良いものになります。
私も祖母と同居していた父が脳梗塞で倒れ、祖母に施設入居の話をしたときに「絶対に施設なんか入らん。
一人でここ(自宅)でおれる。」とか言って私のことを3分ぐらいにらめつけていましたが、それでも近くに看てくれる親族もおらず特養に入ってもらいました。
そこはあまり合わなかったみたいですが、幸いに別のところに入れました。
次のところはすごく気に入ったみたいで、面会に行くと「おばあちゃんここ来てよかったわ。
ご飯もおいしいし皆優しいし。
おばあちゃんはここで死ぬねん。」といつも言っており、本当にその施設で94歳で亡くなりました。
いっつも面会のときはニコニコで、施設の方にどれだけお世話になっているかを話していたことを覚えています。
余談になりましたが、親族といえども余計な批判は無視して、胸を張ってよりお父様お母様に合う施設を探しましょう。
応援しています。
この記事を読んで少しでも心が軽くなってもらえれば幸いです。
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