住宅型有料老人ホームは終の棲家じゃないって本当?

介護施設の悩みあるある

住宅型有料老人ホームは終の棲家じゃないって本当?

よく、有名サイトに住宅型有料老人ホームのデメリットとして、住宅型有料老人ホームは元気な高齢者向けで介護が重くなれば転居が必要になることがあります。

その点介護付き有料老人ホームだと介護度が重くなっても最後まで住み続けることができますなどと書かれています。

住宅型有料老人ホームだと看取りができないの?

なぜそのようにとらえられているか、今日はその理由を深堀していきます。

元住宅型有料老人ホームの施設長をしていた経験をもとにお伝えします。

ぜひ参考にしてみてください。

 

住宅型有料老人ホームは終の棲家じゃないって本当?

今回伝えたいことは、本人がしっかりされている間に最期をどうしたいかということを、家族としっかり共有しておいてくださいねということです。

まずなぜ、住宅型は元気な人向けで介護付きは重症な人向けと言われるかというと、看護師の配置が24時間か否かということになります。

介護付き有料老人ホームの人員基準では24時間の看護師の配置が必須ではありません。

しかし、夜間に看護師を配置すると加算が取れますし、ほとんどが24時間看護師を配置しています。

逆に24時間看護師を配置していないと選択肢から外される可能性があります。

というわけで、多くの介護付き有料老人ホームは看護師を24時間配置しています。

翻って、住宅型有料老人ホームは日中に看護師を配置していますが、夜間は配置していないホームが多いです。

理由は労務管理コストに見合うインカムがあるかどうかわからないからです。

そうなると、たぶんほとんどの方は、「24時間看護師がいた方が安心するわ。」と思われるかもしれません。どうしてそう思うのでしょうか?

それは、「夜間になにかあったときの対応。」と思われるでしょう。

もちろん看護師になるためには3年以上の教育を受けて、国家資格試験を合格しなければならない一方、介護職員初任者研修では130時間のカリキュラムを受講するだけで取れてしまいます。

この時点においては知識に大きな差があります。

しかし、「夜間何かあったとき。」は基本的に救急車を呼びます。

それは、家にいる時と同じです。

実際、10年の施設経験がある介護士と外来の経験しかない看護師では、同じ10年の経験だったとしても、状態観察や緊急の対応力は介護士の方が上です。

じゃあなんで?

答えは、「夜間に医療処置」ができるかどうかです。

 

入居者の退院時にありがちな問題とは

 

私がホームで働いていた時に、入居者の退院時いつも問題になっていたことが2つあります。それは

  • 医師より、「夜間も喀痰吸引の必要性がある。」と指示が出た。
  • 食事が口から食べられないので経管栄養が外せない。

でした。

 

なぜ、問題になるかというと夜間に医療処置ができないリスクとして

  • 窒息

痰で気管が詰まり呼吸ができなくなります。

  • 特に中心静脈栄養を直接カテーテルで挿入している場合、抜去してしまうと救急車を呼ぶことになってしまう。

もちろん24時間の訪問看護や訪問診療医と契約してもらっていますが、やはり現場到着には1時間程度はかかってしまいます。

結構な出血があり、看護師が到着してから救急車を呼んだものの、状態があまりよくなかったりすると「どうしてすぐに呼ばなかった。」というようなクレームに発展する可能性があるため、即救急車を呼びます。

CVポートとかいう話もありますが、それは今回割愛します。

こういった事が事前にわかっている為、夜間そのような医療処置が必要となると住み替えを提案することになります。

ただし、例外があります。

その施設又は運営会社本部の方針にもよると思いますが、ターミナル(終末期)の場合で、本人、家族が施設側と話し合い、できること、できない事をしっかり理解し、上記のリスクも受け入れ、退院後受け入れる医療者側、施設側、入居者側三方が覚悟を持ったうえで受け入れることは不可能ではありません。

しかし、2つ条件があります。

まず、終末期ということがポイントで、「点滴を止める」です。

中心静脈栄養を入れることと痰がからむことにはビミョーに相関関係があります。

終末期に点滴を入れると確かに半年ほど余命は伸びるそうです。

ちょっと余談で、これはあくまでも私見ですが、食べることって人間にとって、「マズローの欲求5段階」の最下層ですが、すごい楽しみでもあると思うんですよね。

私は本当に料理をすることと食べることが好きなので、自分が口から食べられなくなり経管栄養生活になったりすることを考えると「いやいや、ないわ。しかも終末期で余命半年のために?」と思ってしまいます。

まぁそんなどーでもええ話は置いといて、

ただし、弱っている体に普通に点滴を入れると、

  • 分泌物が増え、痰がからんできます。もちろん弱っている為自分で痰を排出できないので、吸引機で痰を引くことになります。されている方はめっちゃ辛そうで、施行している方も「ごめんなさい。つらいですよね。もう少し我慢してくださいね。」と声をかけながら行っていました。
  • 心臓の機能も弱っている為、浮腫みがでます。これもつらそうです。その浮腫みを取るため利尿剤を使って体内の水を出すことになります。点滴で体に水分を入れて、薬を入れて水分を出す。そしてまた水分を入れる。何をしているかわからない状態です。また、パンパンに張った皮膚が少しでも傷つくと浸出液が漏れだします。
  • 出きらない水は体内に漏れ出します。肺に漏れ出すと息苦しくなるので在宅酸素を導入するようになります。

では、点滴をしなければどうなるか。

もちろん脱水状態となり、余命はわずかとなります。

脱水状態ってつらいんじゃないの?と思われるかもしれません。

しかし、私が経験してきた限りでは最後は水分を抜いて乾いていかれるほうが安らかな最期を迎えられていたように思います。

一緒にかかわってくれていた訪問診療医が心配しているご家族に、「最後は乾いた方が、頭がボーっとなって苦痛も感じなくなるので本人のためにもいいんですよ。

だから点滴するより、しっかり意識があって少しでも食べられるようなら施設の看護師と相談して本人の好きなものを食べることができる範囲で、難しくなってきたら少しアイスを口に含ませるなどしてあげてください」と話をされていました。

 

ご家族の覚悟

次は、ご家族の覚悟です。

退院時、病院で夜間も定期的に喀痰吸引が行われていた場合、夜間に吸引ができる体制がない施設は病院側、Drに選択肢から除外されます。

実際夜間吸引ができる体制でない場合は、看護師が退社するギリギリ18時に吸引して、出勤してすぐ9時にまた吸引する。

夜間は介護士が口腔内に見えている範囲の痰をスポンジなどでぬぐい取るといったような対応となります。

入院中の病院の主治医に上記の対応であるが、もともと住んでいた施設に戻したいと伝えた場合、絶対に「良い」とは言いません。言うわけがありません

当たり前ですが、窒息のリスクがあるからです。

もし「良い」と言って退院した次の日に窒息して亡くなれば言質を取られ訴えられるリスクがあります。

ですので、私も病院のDrが許可しないことは間違っていないと思います。

しかし、それでも本人の意向が、リスクがあったとしても戻れるなら戻りたい、状態もギリギリ上記の対応で行けそう。

家族も窒息のリスクがあり、退院したその晩にも窒息して亡くなる可能性がある。

病院の主治医が反対している。また、確実に1か月以内にはいなくなるといったことも含んだうえで戻ってくる。

そこまで覚悟してくれているのであれば、受け入れる方針の施設であれば受け入れます。

いろんな状況があるので施設としても答えにくいところではありますが、ここは入居時にぜひ方針の確認をしてください。

病院の主治医が反対しているって、かなりハードルが高いので、それを押し切って退院する覚悟をしてくださるということは施設側とすればすごく光栄なことだと思いますし、入居者、ご家族と施設側にしっかりとした信頼関係ができている証拠だとも思います。

ということで、一概には言えませんが、以上のような状況であれば住宅型でも看取りは出来ます。

 

で、ここからが私の体験を通してお伝えしたいところです。

私が勤めていたホームに入居されていた80代の男性の話です。

その方は認知症の奥様と一緒に入居されており間質性肺炎を患っておられました。

また、一人息子さんが新幹線で2時間と遠方に住んでおられました。

間質性肺炎が悪化して、主治医からご子息に「かなり肺炎が悪化している。このままホームで看取りますか。病院で治療しますか。」という話をした時のことです。

主治医からは「入院してもあまり効果は期待できない。」とも言われましたが、ご子息は「少しでも可能性があるなら入院して治療してほしい。そうでなければ自分が後悔する。」と返事をされ、本人も「息子がそう言うなら。」と言われ入院となりました。

ご子息から「母が寂しがるかもしれないから費用はかかってもいいので毎日病院に連れて行ってほしい。」との依頼があり、近くの病院だったので、私を含め数名のスタッフで行うこととなりました。

その男性は私のことを良く思ってくださっていて、2~3回目に奥様の送迎をしたときに、「おぉ。よく来てくれた。」とすごく喜んでくれ、話も15分ぐらいして、「そろそろ帰りますね。」とお伝えすると「なんだ、もう帰るのか。もう少しいてくれよ。でも仕方ねえな、あんた忙しい人だからな。」とすごく寂しそうに仰られていたのをおぼえています。

その時点で足が浮腫んできたということで包帯をキンキンに巻かれていました。

その2~3日後には意識もあいまいになり、入院してから1か月ほどして病院で亡くなられました。

タラレバは言っても仕方ないですが、1か月なら、ホームにいても大して変わらなかったと思います。

本当はホームにいた方が、私を含め知った顔がもっと頻繁に部屋に訪れ、少なくとも病院にいるよりかはさみしい思いをしなくて済んだのではないかと今でもモヤモヤ感が残っています。

もしかするとご子息の意向を汲んであげることが、本人にとっては一番だったかもしれませんが・・・

 

まとめ

最近は「終活」や「在宅での看取り」という言葉をよく目や耳にすることが出てきましたが、しかし、まだまだ「医療は万能」「治してくれる」といったような期待を持っている方が多いと思います。

積極的な医療が適切なタイミングなのかどうなのか。

逆にさみしい思いをさせてしまったり、痛い思いをさせてしまったりすることがないのか、どうしてあげることが本人にとって最善なのか。

もし、ご家族が本人と終末期についての意思の共有できていないなら考えなければいけない所です。

私の知り合いの看護師が言っていました。

「医療職の私が言うのもどうかと思うが、終わりが近いのに下手に医療にかかわると簡単には死なせてくれない。」

これは、本当にそうだと思います。

だからと言って、絶対に終末期で医療にかかわるべきでないと言っているわけでもありません。

例えば、寝たきり状態でも尿路感染で高熱が出ていて苦しんでおり、回復の見込みがあるのなら点滴することもあると思います。

また、本人が「最後の最後まで治療してほしい。」(あまり希望しないと思いますが・・)こう希望するのであれば、それもありだと思います。

色々な立場や考え方、状況があるので、どれが間違いということはないと思います。

しかし、本人が意思表示できる間に最後をどのように迎えたいのかを共有することで、最後の時間を有意義に過ごすことができると思います。

この記事を読んで必要性を感じていただけたなら幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

 

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました